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MANCHESTER TEE

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俺はwhite out bike studioという自転車屋を営んでいる。根城/部室にしている東長崎のMIA MIAというカフェのオーナーにも「チャリ屋さん」と呼ばれている。
ある日、THE STONE ROSESのTシャツを着てMIA MIAを訪れたところ、ローゼズの輪切りのレモンロゴをして、スタッフのごうくんに「自転車の車輪かと思いました」と言われた。white out bike studioのロゴが決まった瞬間だった。

結論から言うが、俺の中の「かっこいい」はすべてoasisから始まっている。2007年、実家の部屋のコンポにDefinitely MaybeのCDを入れ、再生ボタンを押した瞬間に、それまでの俺の「かっこいい」の概念はギターの轟音とともに崩れ去り、聴いたことのない英語の発音(ひどいマンチェスターなまりは金属バットの漫才における拡張された関西弁と同じクールさがある)によって書き換えられた。

oasisにハマった俺は、そこから「ハマる」ということにハマっていく。

——以下読み飛ばし可——

Oasisが住んでいる都市はマンチェスターというらしい。マンチェスターといえばユナイテッドしか知らなかった俺は、oasisが熱心なサポーターであるマンチェスターシティから世界史への興味が開かれる。
世界史と言っても教科書の世界史ではない(山川の世界史Bは本当に面白いが)。より正確に言えば、「自分も世界史の住人である」という帰属意識だ。

欧州でサッカー観戦が盛んなのは、おそらく日本よりも内戦が盛んだったからだろう。そして自分の「街」への意識が芽生える。イオンすらない俺の住んでいる伊勢崎市は街なのだろうか。東京に行けば「街」があるのだろか。
そしてoasisにとって「街」の先輩であるストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズを聴く。それまで「ダメ・ゼッタイ」以外の何物でもなかったドラッグとカルチャーを知る。セカンド・サマー・オブ・ラブなる現象があったことを知る。人間の意識や音楽のムーブメントが「現象」とされることがあるのか。「セカンド」ってことは「ファースト」があるのか。
1969年のジミ・ヘンドリックスが国家を歌詞無しで演奏したことを知る。幼い頃に見たベトナム戦争の映画と音楽が結びつく。そのすぐ後ろには、親のカーステレオで散々聴いたビートルズが控えている。ビートルズが「親の音楽」から「俺のロック」になる。ということは、と実家の納戸のレコード棚をみると、ザ・フーやジャニス・ジョプリンが並んでいる。親もまた世界史の住人だったことを知る。

再びoasisに戻る。クール・ブリタニカというイギリス政府の政策と、ブリットポップという概念を知り、そこから近現代イギリスの都市における格差社会を知る。イギリスは格差社会が日本よりひどいらしい。だから労働者階級の出であるoasisは当時のイギリス労働者階級のヒーローになった。では、blurの知的な垢抜け具合も好きなのはダブルスタンダードなのだろうか?俺の親はブルーカラーで油まみれの仕事をしていることと俺がoasisを好きになったことを結びつけるのはいささか自意識が過剰すぎるのではないか?むしろ、中産階級を生産しようとしている偏差値63の高校に通う俺は本当はoasisなんか聴いてちゃいけないんじゃないか?(そして美大卒の母親と自身の偏差値のギャップはその後レディオヘッドによって一旦の解消を見る)

——終了——

以上のことが3ヶ月で起こった。3ヶ月だ。oasisは俺を完全に、世界/音楽/街/アイデンティティに「ハマらせた」。
その後いま現在2024年に至るまでの17年間で、俺はたくさんの「かっこいい」に触れ、ハマってきた。それは映画であり、文学であり、場所であり、学問だったりした。
だから、俺はどうしようもなく「かっこいい」ものを愛している。あの3ヶ月によって構成された世界の見方は、ときに歪み、ときに忘却されど自分のど真ん中にある。

だから俺が作るものにはすべてoasisが流れている。ひきつけた言い方をあえてするが、俺の作る、俺が世界で一番かっこいいと思っている自転車たちには、音楽が、世界史が、アイデンティティが流れている。
それを広めたくて仕方がない。俺は俺の信じる「かっこいい」を世界にさらしたくて仕方がないのだ。
だとしたら、oasisの源流である「あのロゴ」と、彼らを生んだマンチェスターシティのカラーのTシャツを、ショップオリジナルのマーチャンダイズとして出すべきだと思った。その背中には、ストーン・ローゼズの輪切りのレモンをサンプリングした当店のロゴをデカデカとプリントし、着る人に背負ってもらうことにした。

Oasisはネブワースでのライブで「This is history」と言った。まさにそう、その瞬間こそが歴史なのだ。自転車に乗っている時間も、これを書いている時間も、Tシャツを着ている時間も、すべて歴史なのだ。
ここに書いたのは俺の話ではない。すべての人がそれ以外にはなれず、歴史の住人だ。oasisが俺に教えてくれたのはそういうことだった。

歴史を着てくれ。

MANCHESTER!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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Model:yagi hiromi (https://www.instagram.com/_yagihiromi)
161cm/Size:L

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